ABEJA 人月の利益構造分析 / 2026-07-09

ABEJAは稼げていないのではない。
粗利を販管費と外注で食い潰している

売上を「原価・販管費・営業利益」に分解し、人月・準委任で稼ぐ会社と比べた。各社の決算短信・有価証券報告書の実数ベース。

対象: ABEJA・ベイカレント・グロービング・シグマクシス・フューチャー・PKSHA・ブレインパッド・SHIFT・Laboro.AI。数値は各社直近本決算(会計期は8月〜3月でバラつき)。販管費=販売費及び一般管理費(営業・管理・採用・研究開発など、案件に直接ひもづかないコスト)。

結論:ABEJAの粗利率62.4%は勝ち組より高い(ベイカレント56.6%・シグマクシス44.6%を上回る)。1件ごとの利ざやはむしろ優秀で、単価は取れている。

負けているのは販管費率49.9%=勝ち組の2倍以上(ベイカレント22.3%・シグマクシス23.2%)。粗利62.4%から販管費49.9%を引くから営業利益が12.4%しか残らない。販管費率を勝ち組並みの25%に下げれば、営業利益率は37%になる計算。

さらに売上原価の49.2%が外注費(前期37.8%→急伸)。人が採れず外注・業務委託に頼り、それが原価と販管費の両方を重くしている。打ち手は「もっと稼げ」でなく「重い販管費と外注依存を軽くする」。

1 売上の使われ方:ABEJAだけ販管費(オレンジ)が突出

各社の売上を100%として、原価・販管費・営業利益に分解。営業利益率の高い順。オレンジ(販管費)が薄いほど、稼いだ粗利が利益に残る。

ベイカレント営利34.3%
原価43
販管22
34
グロービング営利33.9%
原価32
販管34
34
シグマクシス営利21.4%
原価55
販管23
21
フューチャー営利21.3%
原価51
販管27
21
PKSHA営利18.0%
原価50
販管32
18
ブレインパッド営利13.4%
原価52
販管35
13
ABEJA営利12.4%
原価38
販管50
12
SHIFT営利12.0%
原価65
販管23
12
Laboro.AI営利10.1%
原価33
販管57
10
原価販管費営業利益

ABEJAは原価が一番小さい(38%=粗利62%)のに、販管費が一番厚い(50%)。だから営業利益は12%。営利率=粗利率−販管費率なので、ABEJAが12%に沈む唯一の理由が販管費の重さだと一目でわかる。ベイカレント・シグマクシスは販管費22〜23%に抑えて粗利を利益に落としている。信頼性:高(決算短信・有報の実数)

2 人が採れず、外注に頼っている

売上原価に占める外注費(自社で採れない分を外部委託する費用)の割合。金額開示のある3社のみ比較可能。

ABEJA原価の49.2%
グロービング33.7%
ブレインパッド(単体)21.7%

ABEJAは原価のほぼ半分が外注費で、前期37.8%から急伸。加えて販管費にも業務委託料1.46億が乗る。人が採れないぶんを外注・業務委託で埋め、それが原価と販管費を同時に重くしている=あなたの見立て通り。平均年収952万=残った社員は全員が高コストの上級者。グロービングも外注急伸(7.9%→33.7%)だが高単価で吸収し営利率34%を維持。ABEJAは吸収できていない。他社は外注費の金額を開示していないため比較対象外。信頼性:高(有報の原価明細)

3 営業利益ベースの一人当たり

売上から原価と販管費を引いた「営業利益」を、全従業員で割った額。売上ベースの一人当たりは各社の稼働人数の開示が揃わないため使わない。

グロービング1,026万円
シグマクシス772万円
ベイカレント750万円
フューチャー450万円
PKSHA390万円
ABEJA335万円
ブレインパッド268万円
Laboro.AI199万円
SHIFT133万円

ABEJA335万円は、AI受託の同型(ブレインパッド268万・Laboro199万)よりは上だが低位グループ。単価ルートの勝ち組(グロービング1,026・シグマクシス772・ベイカレント750)の1/2〜1/3。稼働人数を開示する社は営利/稼働人員も高い(シグマクシス902万・グロービング1,573万・ベイカレント910万)。ABEJAは稼働人数を開示していないため全従業員ベースのみ。信頼性:高(決算短信の実数から算出)

4 人月の稼ぎ方は2ルート。ABEJAは単価ルート一択

「若手を型にはめて稼ぐ」話と「上級者のまま稼ぐ」話が矛盾して見えたのは、別ルートを混ぜていたから。2つに分ける。

量ルート

安い若手を大量に × 薄い利ざや

  • 作業をマニュアル化し、未経験でもできる形にする
  • 少数の上級者が監督し、頭数と稼働で総額を稼ぐ
  • 1人の利ざやは薄い(SHIFTの粗利率34.7%が象徴)

該当: SHIFT・Accenture・インドのIT大手(TCS等)

単価ルート

少数の上級者を高単価で × 厚い利ざや

  • 若手をぶら下げない。1人の単価と利ざやで稼ぐ
  • 販管費を22〜24%に抑え、厚い粗利を利益に落とす
  • 「型化」=作った設計を次の案件で使い回し1人の生産性を上げる

該当: ベイカレント・グロービング・シグマクシス(Palantirもこの極端版)

ABEJAは残った社員が全員高スキルの上級者=安い若手を大量採用する量ルートは構造的に無理。単価ルート一択。若手をぶら下げる形に頼らず人月のまま成功しているのは、単価ルートのシグマクシス・グロービング・ベイカレント。ここは迷わなくていい。

5 単価ルートの勝ち組との差分と、模倣できること

ABEJAは粗利(利ざや)では既に勝っている。差は2点だけ。

差分① 販管費が重い

ABEJA49.9% vs ベイカレント22.3%・シグマクシス23.2%。ABEJAの販管費は給料5.9億+採用教育費1.4億+業務委託料1.5億が中心。規模が小さく(売上36億・133名)、非稼働の管理・採用・研究開発コストを売上で薄められていない。

差分② 外注依存が重い

売上原価の49.2%が外注費。外注は粗利を削る。勝ち組は自社上級者の高単価で稼ぐため外注比率が低い(と推測。金額非開示)。

販管費を軽くする:規模(売上)を単価と稼働で伸ばし、固定費を薄める。採用教育費と非稼働人員(管理・研究開発)の効率化
外注依存を解く:内製比率を上げる。外注を使うなら高単価案件に限定し、粗利を守れる範囲に収める
単価と稼働の仕組み化:役職別単価を顧客へ開示して単価を守る(ベイカレント式)。成果を客と共同で負う契約で単価を上げる(グロービング式)
作った設計を使い回す:同じ業界・同じ用途の案件で、要件定義・評価基準・モデルを次案件に流用し、1人の生産性と稼働を上げる(単価ルートの型化)

要は、ABEJAは「もっと稼ぐ」より先に「稼いだ粗利を残す」=販管費と外注を軽くするのが一次の打ち手。粗利率62%は既に勝ち組水準なので、そこを削らずに固定費を下げれば営業利益率は跳ねる。

出典(主要)

ABEJA決算短信FY25/8+有価証券報告書(売上原価明細・従業員の状況)/ベイカレント決算短信FY26/2
グロービング決算短信FY25/5+有報(原価明細)/シグマクシス決算短信FY25/3
フューチャー決算短信FY25/12PKSHA決算短信FY25/9SHIFT決算短信FY25/8
ブレインパッド決算短信FY25/6Laboro.AI決算短信FY25/9

作成: Claude(生田岳 分析用)/ 2026-07-09
数値は各社決算短信・有価証券報告書の実数。会計期はバラつきあり。外注費比率は金額開示のある3社のみ。営業利益/人は全従業員ベース。投資判断用ではない。